2012年11月27日のツイート


■番組の打ち合わせ。収録内容や構成を決めるためのプロデューサーとがっちし一時間。

Bunkamuraル・シネマ『危険なメソッド
面白過ぎ。ここまでオーソドックスな手法のみのシンプルな会話劇という、クローネンバーグの18番を封印したスタイルで望んだ一作は心理学や性といった普遍的なテーマをフロイトユングを通じて物語に仕上げた。単純なカットバックや美しい風景描写に留まりながらも、全く退屈せずに見られたのはその構成のバランスもあるだろうが、各役者陣の見事なまでの演技によるものが大きいような気がする。この余分な贅肉を削ぎ落としたかのようなシンプルさが、少ないキャストの見事なアンサンブルになっていた。途中、数十分間しか出てこないヴァンサン・カッセルの存在があまりに強烈である。性衝動への誘惑へと誘うその佇まいと、作中にも出てくるその「説得力」はまさにヴァンサン・カッセルそのものの官能的な存在感でしかそれを表現することは出来なかったように思える。

終止退屈しなかったのは、まさに作品の中で精神学を探求する登場人物たちと同じく、我々観客もその答えを見出せないテーマだからではないか。観客である我々もまさに現代においてその類いのテーマに悩まされている。

抑圧、不倫、セックス、愛人、上司との関係など、それらが絡み合い精神と結びついていく。

“快楽に身をゆだねろ”とユングに言う拙作『ガクセイプロレスラー』で「刹那的に生きろ」というネゲロ&アナシワ先輩の姿にも重なるし、さらに言えばこの作品はそれらの言葉によって悩み、そして「決定」をしていく瞬間そのものがマイケル・ファスベンダーの見事な演技によってしっかりと描写されている。

これは単に題材の興味というだけでなく、映画の要素のシンプルさにもかけたいやはや見事な傑作としか言いようがなく、また精神の探求というのは観客にこれでもかと考える余韻を与え、かつエンターテイメントとして楽しませ帰路に着かせる両軸を持つものかと感嘆したのであった。

今年のベスト10には間違いなく入れたい作品でありました

新宿バルト9『人生の特等席』監督:ロバート・ローレンツ
一体この映画は何を描きたいのだろうかという問いが中盤まで頭の中に過る。何故か散漫な印象が拭えない全体の構成と、芯のなさそうなキャラクター造形がそうさせるのか、イマイチのれないまま、終盤へ。このまま終わってしまうのかと思いきや、どんでん返しの伏線回収があったので、助かった。ピーナッツ屋の彼が偶然そんなとこでキャッチボールしとるんかいというツッコミどころはあるにしても、あの展開は痛快であった。とはいえ、エイミー・アダムスは驚異的に可愛いし、30半ばの女性を演じる上で安定感はあるにもかかわらず、やはりその芯があるのかどうかハッキリと分からない感じが良いか悪いかは分かれるところではあるのではないだろうか。演出もオーソドックスに見せきった方が良かった。終盤の無理矢理なトラウマ描写はいらなかったなぁ。トラウマをあういう形で理由付けされても、逆にノレないというのは良い勉強になった。あれは「そんな〜」な理由になってしまうように思えた。もうこの作品に関しては本当に良く分からない。それくらい何にも振り切れていない作品ではあった。だから80点の作品のつまらなさと同時に、一定のラインは超えているんだろうなという気持ちも含蓄される。結果として一ヶ月経てばこの作品のことは忘れてしまいそうだ。