『未来を生きる君たちへ』『アダルト♂スクール』

■後楽園大会用のVTR撮影。自分のインタビューが拙かったと反省する。1時間強とみっちり。

新宿武蔵野館『未来を生きる君たちへ』監督:スサンネ・ビア
原題は復讐という意味らしい。この作品を見るとひたすら自分の家族に置き換えられる瞬間が多々あり、作品の喚起力という部分を考えずにはいられなくなる。復讐は一体何を生むのかという根源的なテーマを掲げているが、個人的に復讐系の作品を好んでいることもあり、ここに対して突っ込んでいくとキリがなくなってしまう気もするが、それらの考えとは違うものだと捉えてみる。ここで起こっている復讐とは、概念のことであり、日常的にそのような考えが事の大小に関わらずどのような出来事を生み出してしまうのかということである。復讐系の作品にはそれ相当の復讐をなくてはならないあまりに巨大な理由等もあるので。。

本作に関して感情移入させられる点はやはり「家族」の崩壊と再生を描いているからではないだろうか。ちょっとしたことで家族はもろくも崩壊し、また崩壊に面した瞬間にこそ再生の機会もまたあるかもしれないという瞬間も訪れたりする。個人的には自分自身の母親の癌がキッカケで家族間に起こった出来事を想起させた。喚起力とは最大公約的な表現とも違う。題材が家族だからこそ、全てに当てはまるのかれっきとしたことは分からないが、多くに人に自身の場合になぞらえて考えさせる作品は「強度」があると確信出来た。本作で出現する母親に僕は注目した。自分の息子を愛するが故に、息子絶対主義的な視野になってしまう母親という存在のモロさと強さが見事に表現されていたからだ。おそらく自身の息子が大事に至った際には、それに関係する息子の友人をやはり許さないのであろうし、父親とは違う態度で接するのだろう。そんな景色がとてもリアルな場面として映し出されていた。カッとキレやすいタチの悪い親父という存在もやはり日常的に存在する。それは「バカ」だと割り切って接するしかない。バカなやつに復讐してもしょうがない。だから父さんは殴られても痛くもないという息子に教える父親には、姿形には見えない「精神力」や「倫理観」のようなものが見えた。これを表現するのは難しい。暴力を描く方が遥かに簡単だろうし、またそれは現実においても暴力を振るってしまう方が遥かに楽なことであろう。しかしその前に圧倒的な「知性」や「誇り」を持つことで紛争を回避することが出来るという事をこのシーンだけで物語る。しかしそのシーンだけでは子供は理解する事が出来ない。だからこそ過ちを犯してしまう。過ちの中でしか反省することが出来ないという愚かさもまた人間らしい部分だ。紛争から学園内の苛めを等価してみせる構成と、子供たちの迫真の演技。そして見えない「精神力」や「希望」を感じさせるラストなど、紛れもなく映画でしか学ぶ事の出来ない強烈なメッセージ

■DVD『アダルト♂スクール』監督:トッド・フィリップス
これまたトッド・フィリップスの初期作。「それぞれに事情を抱え惨めな生活を送っていた男3人が大学のそばで同居することになったことから、自宅を非公式の学生友好の場として開放しバカ騒ぎを繰り広げるコメディ。」とあるようにこれまたテンプレート型として見られる法則がある。既にハングオーバー型と言ってもいいであろう気の知れた男3人が互いに何らかの干渉をし、徐々に非常識なことがどんどん起こっていくというスタイル。トッド・フィリップスの場合は3人から4人、5人程度の「男たち」とその中でわりかし「巻き込まれてしまった男」が一人存在しているのがミソ。社交サークルを結成、人知れず活動していると入部希望者が増えているという「ファイトクラブ」的現象が起こっているのがいちいち笑える。ここでも「性」への欲求に対して「飲酒」への欲求が非常に強い力(人間の生理的本能)として登場する。ウィル・フェレル演じるフランクが今日は飲まないと宣言しパーティーに繰り出すも、一杯だけ飲もうぜと言われ飲んでしまうとすぐさま「おかわり」と酒乱に変貌し、全裸でストリーキング走り回ってしまう。飲酒の誘惑からのドタバタというのはハングオーバーの導入としてもはやおなじみだ。

ここで自分の卒業制作の足りなかったのは「飲酒で騒ぐ」ことだったなーと気づく。まあ騒いでいるのだけども、酒飲みというキャラがいてメンバーが巻き込まれるというシーンもあってよかったなと思う。

この作品でも単品でもイケる笑いが随所に、麻酔銃を自分に誤射したり、女性たちがフェラチオ講座をやっていたり、どれも日常の捻れを上手く笑いにしている。落ちこんだニッチにニッチ祭りと題して大々的にパーティを開催する。DVDメニューにもあるように「ギャルは無料」といったトンチの聞いたサービスが随所にあふれている。しかししっかり本作はプロットの落とし込みがとても上手い。リッチがセックスしてしまう女性が上司の娘で高校生だったり、それによる誤解の発生など。

単品でも笑えるコメディネタの鉄板と法則をまとめてみる
狂言回しの悪友が必ずいる。(しかし妻子持ちだったりと実は常識人)

■お調子者の暴走男がいる(身体を張る)

■主人公は友人によってある事態に巻き込まれ私生活が悪化する(周りはよかれと思いどんどん行動がエスカレートする)

■車はいちいちスピードをとばす

■ここぞというタイミングでのメタル曲や音楽のセレクションが抜群。曲のテーマや歌詞で後の笑いにもっていったり。

■老人ネタがある。

■麻薬、酒、セックスが最強。

■人生讃歌なラストになる。

■権力者が裏でアブノーマルなことをしている

などなど