『ちいさな哲学者たち』

新宿武蔵野館『ちいさな哲学者たち』監督:ジャン=ピエール・ポッツィ、ピエール・バルジエ
やや期待し過ぎた気もしないでもない。幼稚園のある種の哲学ワークショップを映し出すわけだが、テンポやカット、構成がどれも似たり寄ったりで実はだんだん飽きてくる。終盤、授業中に寝落ちしそうになった少年が微笑ましかったが、実際のところその少年は観客の気持ちも代弁してくれている気もしてしまう。文化映画としては確実に及第点なのだが、それ以上を求めてしまうのは酷なのだろうか。ドキュメンタリータッチの「パリ20区、僕たちのクラス」を既に見てしまっているせいもあるかもしれないが。実際のところ哲学の授業がそこまで革新的に見えなかったのもそうだ。子供たちが大人たち以上に議論するということは子供を持っている人にとっては、非常に目新しいシーンに見えてしまうのかもしれないが、子供たちが何かもの凄い発見を見いだしたようなケースは見受けられなかった。テンポ、構成を変えずに最後まで仕上げきるのは、特にアート・ドキュメンタリーの鉄板という気もするが、この題材にこのスタイルで良いのかという気もしてしまう。見ていて思ったのは全体的に男の子たちの方がかわいらしく、無邪気に育っているような気がした。子供たちの些細な表情や、言葉の抑揚でいくらでもこちらを微笑ませられることが出来ただけに、もっと子供たちをフラットではなく、いくつか主人公を選んだ上で見た方が観客は感情移入出来たように思える。『アメリカン・ティーン』が劇的に成功しているのはやはり、数人の主人公がいるからであり、これがあまりに不特定多数だと非常に見づらくなってしまう。幼稚園とはいえ、誰かが誰かに恋心を抱いていたりという描写がある以上それは「学園モノ」というジャンルであり、そこにはしっかりその固有名詞が必要なのだ。見たいのは子供たちが「思考」することではなく「アクション」をする部分である。この映画には徹底してアクションがなかったような感じだ。