『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』

■新宿バルト9『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』監督:神山健治
攻殻シリーズは学生時代に途中で挫折してしまったのだが、それほど予備知識がなくても大丈夫とのことで行ってきた。まず丁寧なドラマ構成が前提の上でのマトリックス世界観の構築がしっかりなされていることに感服。進行するドラマ自体は実に王道のストーリーテリングながら、各要所で3D映像の真新しさで締めるのは流石。もはや現実世界でもiPhoneのような電子端末が当たり前になり、Twitterのような高速メディアが登場した今、不思議と作品内で描かれていることは遠い世界には感じない。電脳世界へのハッキング、それによるテロなどは現実的に十分ありえる世界へと変貌を遂げているし、ロボットの各ガジェットなども「ありえない」という造形感の印象がまるでない。3D効果もなかなかのもので、アニメーションによる独特のコマの動きが実に心地よかった。それぞれのキャラクターに「色気」があってどれにもファンになれる要素が一つ必ず備わっている。これは実にキャラクター造形で重要な部分ではなかろうか。いや、たぶん物語の6割も把握出来てないはずなんだけど、なんだか参ってしまった。というのもアニメーション作品から遥かに学ぶべき項目がある気がしてしまったので。これはもしかしたら神山作品独特のものかもしれないのだけども、ストーリーテリングがしっかりしている、キャラクター造形の繊細な描き方、映像による挑戦、サウンドの重厚感。そのどれもがまぎれもなく「映画」にするための要素としてしっかり存在しているから。アニメを観たというより、「映画」を観たという実感に浸れたのはおそらくそれらの要素がスイングしてたからではあると思うが。