成田社長

成田大致と2.3DPG@新宿FACEの打ち合わせをしてきた。新宿のファミレスで大致君が終電で帰れるギリギリの時間までずーっとおしゃべりをしていた。成田君とはかれこれ1年くらいの付き合いになろうとしているんだけど、同時代の人間として共感出来ることが沢山ある。今回のDPGの新宿FACEもVTRの制作を頼まれた。VTRのディレクションのことを考えると、俺より良いものを作れるディレクターはきっと世の中にいっぱいいるだろうし、手弁当で制作している自分なんかよりもちゃんとしたプロダクションで制作しているチームに発注することだって出来るかもしれない。それでも大致君が僕に頼んでくれるのは、同世代ならではの共通言語が僕らには沢山あるからだと僕自身は認識している。

彼が昨年させたDPGというプロジェクトに立ち上げの当初から少し関わって来た。このオーディションの撮影をお願いされ、オーディション参加者の履歴書を見ながら酒を飲んで、イメージを固めたりしたり。その中には今をときめくボインメーカーのの子さんとかもいたりして、「僕、この人のDVD持ってるよ」なんて話をしたりして、郄田あゆみにも「プロレスやったらいいじゃん」なんて話をしたり、今でもそんな些細な会話の点と点が繋がって今に活きていることは多くなってきた。夏の魔物ちゃんねるは僕が夏の両国大会で忙しくなるまで、手弁当で制作させてもらってました。今は室谷君という彼の右腕がいるんですが、彼も凄く良い男なんですよ。

大致君とは何者なのだろうかと詮索すれば、実家は金持ちだとか、夏の魔物というフェスティバルのとんでもさがクローズアップされて、恐らく本人もそのようなイメージや世論と闘って来たのではないかということは容易に創造出来るんだけど、本人のバカ正直な部分もあってか何かと炎上を起こして来たりという部分も多くあったのだと思う。

しかしながら、実際のところ成田大致というのはその側面で見るべき人物ではないということは話をすればするほどに分かってくる。成田君は確実にある衝動や情熱に突き動かされて動く若者であって、いくらでも彼に共感出来るポイントなんて腐る程あって、僕は少なからずこの1年間、そのポイントをひたすらディスカッションし「俺たちの共通言語」を交わすことで、僕自身のある情熱を再燃させることが出来たのだと思っている。

今日話しながら、自分たちの原体験は何だろうという話に行き着いた。これまで本当に色んな話をしたんだけどね、それこそアイドル、女性、傾向と対策、人間関係、組織論とか。ただ俺たちの原体験は何なのかと、一体何に突き動かされているんだという話にいよいよ行き着いたわけですよ。そうしたら成田君は「僕はみちプロだと思います」と言うんですね。あーなるほど!と思ったんですね。彼自身は過去に2度も自分が創作したバンドそのもので挫折をしているわけです。その中には色んな理想やビジョンが投影されてきたと思うんだけど、そのどれもが尻切れに終了してしまった。そういう反省を活かしながら、これがダメだったら青森に帰ろうという決意でやっているのが、DPGだと思うんですが、まさにこのファーストシングルの画と彼が原体験というみちのくプロレスというのはレイヤーが重なって見えるところが多くあると思います。要素だけとっても、多種多様なマスクマンから、見栄えのするコスチューム、そして非日常のリングという世界とは対象的な牧歌的な背景と、それこそそれはみちのくプロレスが作り上げてきた世界だと思います。成田君は青森という地方にいながら、CSのプロレスチャンネルに加入して東京への憧れを募らせながら、東北で活動をするみちプロによって育ったんだと思います。「サスケの締めの言葉があって、みちプロのテーマが流れる、あの瞬間が好きなんです」っていう大致君は少年の頃に見て来たその風景を自分なりに変換して、今の時代を投影させて何かを打ち出したいのだと思います。コミカルな試合があって、それでも多くの事件があって、サスケがいていつも魅了されていたと語るように、DPGはかつて大致君自体が見ていたその原風景を準えるように地道に活動をしているように思えます。だからこそ過去2度に渡って作った自身のバンドのコンセプトがフィットせずに尻切れに終了してしまったというのは、自身の原体験に正直でなかったとも言えると思います。


俺にも原体験があって、それは世紀末にあった後楽園ホールであったある興行です。たった500円の立ち見席で見たその光景は、様々な人間ドラマと圧倒的なハチャメチャさ、ライブ感でもって、未だにあれを超える興行を感じたことはない。原体験というのはそういうことで、まさにその世界観が僕の心に刺さったんですね。それを超えたいとか、あの時にそう思ったのは何でなんだろうということを、永遠とあーでもなく、こーでもなく僕と大致君は語り合うわけです。成田大致は「高揚」という部分で得意の体質を持ってます。特に1.4東京ドームの観戦はもう彼と一緒に観に行かないわけにはいかないくらいのイベントですよ。スタンド席で一人「うぉぉぉぉぉぉぉ!」とNWA王者のテーマがかかっただけでテンションマックスになってたのは彼しかいませんでしたから。いやでもプロレスって本来そういう盛り上がりをして欲しいんですよね。多分本場のレッスルマニアとかそんな感じなのかなーと思いつつ、何故か日本人離れした「盛り上がり」を一人でしているから凄い。酒を入れてるわけでもないし。とにかく熱という部分でひたすら敏感な男です。

そういう部分の「共通言語」というのはやっぱり同世代でしか感じ合えない部分があると思います。ましてやキーワードは「プロレス」なんですよ。専門チャンネルでしかやらないような細分化した世界のある一点における重要なポイントについて語り合えたり、違うジャンルやワードと接続出来る友人が欲しかったと思います。何たって大致君はアウトプットとして音楽、僕は映像なわけですから。

たぶんそういう「共通言語」を共有出来なかった、ビジョンが一人歩きして、ディスカッションが出来なかったのが恐らく過去のバンドなんだと思います。憶測ですが、きっと「プロレスのあの試合っぽく!」とかそういう会話をしていたに違いありません。けど他のメンバーは「何それ?知らねーよ」みたいなね。そういう言語のズレとかって孤独感を増幅させますし、ましてや青森という地方にいることで、大致君の何かはこじらせ続けて来たのだと思います。

僕はそういう部分で多いに学生プロレスに救われたと思いますね。学プロの仲間がそういう部分を共有させてくれたし、それこそアウトプットはプロレスなわけですからね。最終的に卒業制作で作った映像自体も学生プロレスの世界そのものをテーマにしました。きっと学プロがなかったら僕はただのおもんないヤツになってたと思いますし、何も残せないまま、何も残せない美大生で終わってたと思います。それくらい共通言語と情熱が注げるもののバランスと友人関係というのは密接に表現への渇望に関わって来る問題でしょう。

大致君にとってはようやく仲間が出来た、様々な苦労をしてきて、今ようやくパズルのピースが揃おうとしていると思います。福田君や、大内さん、細身君たちはそんなビジョンの良き理解者だと見ていて思います。脇を固める室谷君、よく喧嘩をする北谷さんだっていると。時にDPGのメンバーの繋がりや盛り上がりは羨ましく思えるときさえあります。僕がやってるガンバレ☆プロレスだって大家健と自分の二人だけだし、いつも作業している映像班部屋は深夜で作業しているのはいつも一人ぼっちだったり。もう僕にはそういう寂しささえあるんですけどね、これは本当に寂しいというか、たまに多人数でやってるプロジェクトとか、女性社員がいる企業とか、お茶汲んでくれる人がいるとか、代わりに素材の用意をしてくれる人がいるとか、もう本当に羨ましいけど、自分でやるっきゃないっていってやり続けていると。とはいえきっと大致君だってどこかで黙々と一人で仕事をしているときだってあるはずなんですよね。ましてやあれだけの年頃の我の強いメンバーをまとめることだって大変だろうし、それをほぼ手弁当で立ち回ることも大変なはずなんですよ。そういう情熱というか、ビジョンとか、自分が影響を受けて来た表現に対する想いがパンパンになってきてる。時代もそうだし、我々の年齢も20代後半ということもあいまってそういう部分が破裂寸前なわけですよ。

今の俺らは勝負なわけです。自分たちの世界は自分たちが影響を受けて来た世界よりも遥かにミニマムな世界で存在しているけど、それで満足なんて出来ないわけじゃない。だってそれで幸せになれないんだもん。原体験になってるものが強く残っているからこそ、それをただの思い出に風化したくないわけです。だって表現願望あるし、熱を作りたいと思うし、それでも上手くハマらないことが多い。それくらいマーケティングや傾向と対策が必要だったりするわけだけども、それに自分の想いがフィットしないことだって遥かに多い。でもそんなことを時代のせいには出来ないわけで。もう後がないしで。それでも成田大致と話をすると駆られる。煽られる。それは共通言語を細部まで共有出来るし、何より同世代だから。これは俺たちの世代闘争なわけです。藤波、長州、前田にならなくちゃいけない。噛みつくしかない。悪あがきだと思われても、これで終われないのだからやるしかないんですよ。2.3DPGはそんな成田大致のこじらせが爆発するイベントになると信じています。

ガンバレ☆プロレスもよろしくお願いします。