『ドコニモイケナイ』

ユーロスペース『ドコニモイケナイ』監督:島田隆一
作品を通して何とも盛り上がりきれないテンポと、構成と、素材。しかしながら、監督自身の想いを乗せて9年の歳月をかけて完成させたということに頭が下がる。作品の内容云々なんかより、モヤモヤしたものに決着を付けようとした監督の勝ちなんだと背中を押された気分になる。渋谷の街、主人公の魅力はあるんだけど、彼女自身からもっと大きいステージにたてて上げるための建設的な演出が必要だったのではないかと思う。ここまでシニカルに達観した作りにする必要性はあったのか。もっと劇的に盛り上げられたのではないのか、いや待てこのシンプルな素材そのものを並べた構成の生々しさこそが、夢を目指す若者の残酷さを描くに適していたのかもしれない。何はともあれ、作品を完成させる執念と、答えを用意せねばならないというドキュメンタリー監督のサガというものは勉強になった。

病気の扱いをごり押ししないのはとても良かったし、後半の構成から横移動の狙い定めたショットは実に効果的だったと思う。ドキュメンタリーに演出的ショットを効果的に出すという良い見本ではないかと思った。

トークショーの山戸結希という女性監督の感想がとても面白かった。「ルックスの良い女性の堕落」としてあくまで、その主人公の容姿から見た印象を主観で語る様が凄いのだ。確かにこの映画、ドキュメンタリー映画としては最高のキャスティングだ。何より主人公が可愛い。だから故に許される事、許されない事の事柄が存在し、また映画としのあるハードルをクリアしている。やっぱりルックスって大事だなと思ってしまった(笑)