『あの日、欲望の大地で』/『バトルシップ』

■DVD『あの日、欲望の大地で』監督:ギジェルモ・アリアガ
同時進行に描かれているような二つの物語は脈略のないように思えて進んでいきながら、終盤に向かってこれは少女、とその少女の後の姿が時制を巧みに交錯させながら進んでいったことが分かる。実に巧みな時間軸の捜査だ。作品は「傷」がテーマであり、その傷がどうしようもなく連鎖してしまう救いのなさを描いている。何て事のない傷が、日常を脅かし、その日常を取り戻すために非倫理的な浮気を重ねてしまう。それは子供に連鎖していき、やがて取り返しのつかない破滅に向かっていく。しかしその後に再生も描かれる。記憶と、後悔と反省を映像と記憶のマジックとしか言いようがないその説得力を持って、夫のもとに駆けつけようとするシャーリーズセロンは美しかった。それにしてもジェニファー・ローレンスが素晴らし過ぎて、どうして良いか分からない。ヴェネチア映画祭受賞も納得の新星っぷりにおっちゃん涙が出てくる。ジェニファーローレンスの映画を牽引する力というか、決して美少女過ぎないあの顔立ちと体系のバランスが良いんだろうな。僕が日本のアイドルにハマれないのは「可愛いでしょ?」とここまで押し付けがましくそのイメージを提示されることで、ジェニファーはその押し付けがましさが全くないのだ。もう好きにしてくれよというか、このバランスをどう言語化して良いのか分からないのだけど、こういう「傷」を背負いながら生きていく女性の役柄は今のうちにもっとやって欲しいなと思った。

■編集したくなってきた。作品と向かい合うテンションが整ったような気がする。

■TOHOシネマズ府中『バトルシップ』監督:ピーター・バーグ.
ハンコックの監督ということで一抹の不安を感じつつも、冒頭のキャラクターたちの丁寧な説明と、ハッキリと分かりやすいキャラ立ちに好感触。後にシネマハスラーを聞き、確かに「祭り」感が強い映画だと感じた。突っ込みどころを突っ込む前に、この作品を好きになってしまうバランス感が全体を覆っていて好感触。主人公の才能があるのに適材適所でそれが使えていないという設定や、最初のサッカーでのシーンでライバルであるナガタとの関係性をサッカーという競技だけで説明してしまうのも良いなと思った。どこか少年ジャンプ的ながら活発な男たちならではのグルーヴ感が全体を包み、それが後半の戦艦シーンにおいても引き継がれていくのがgood。サッカーの戦略性、戦艦での戦略性など仕事とスポーツの行動規範が連なっているのが見事なのだ。主人公たちとは別に起こる島での人たちの出来事。同時進行になりながらも、そこでの人間ドラマも見逃せない。かつての兵士が義足になり、自信を失いながらも、その自信を取り戻し、パンチを連打するシーンは痛快だ。そして何といってもアガるシーンをしっかり提示しているところ。おっちゃん達がACDCの曲に合わせて登場し、凛々しい姿で仕事をし始めるあのシーンは問答無用にアガる。つまりプロレスの入場シーンでOBの入場でアガるみたいな感じ。けどこれはプロレスの入場でやっぱりアガるわけだから、そういうシーンを入れないとダメだなと思った。飲み会のyeahなテンションそのものが人生讃歌になるわけですね。