■二日連続で南武線

■立川シネマシティ『ヤング・ゼネレーション』監督:ピーター・イエーツ
府中、六本木と見逃してようやく見れたわけだが、『がんばれ、ベアーズ』とでセットにしたいとてつもない青春映画だった。宇多丸さんのオールタイムベスト。主人公たちはいつもの4人組でつるんでいる。4人は4人ともがコンプレックスを持ちながらも、ちょっと背伸びをしながら。だけど全員が共通しているコンプレックスはカッターと呼ばれる落ちこぼれたちの呼称。彼らが敵対しているのは大学に通っているリア充たち。自分たちが遊んでいるところで、美女を連れて遊んでいるグループがいたり。そんな中で主人公はやはり大学生である女性に恋をしてしまう。イタリア人留学生だと嘘を付いて。すなわち自分の素を見せる事は出来ない、それは誇らしいこともなければ、大学の連中に対して引け目を感じ続けている。そんな鬱憤が溜まる状況下でさらに主人公の家族の生活が映し出される。父親は中古車ビジネスを行っている。父は何かと息子の行動に理解が持てず仕事第1の男だ。そんな父とは対照的に母は主人公の行動に寄り添う。父性と母性が全く異なる面で息子に注がれている。父は厳しくて、母は優しい。そんな3人家族の環境下で生活をする姿はまさに僕が育った平凡な家族そのもので、常にピンチの時に手を差し伸べてくれた母を思い出し、もうこのシーンだけでも涙腺が崩壊してしまった。

家族、友人、恋愛と青春映画のファクターをしっかり定着させた上で、主人公は自転車に熱中している。イタリア人チームが街にやってくると分かれば、それに興奮する。その中でひたすら速度を上げて、トラックを追いかけ、トラックの運転手が窓から手で速度を示すシーンの微笑ましさは一体何だろうか。自転車で移動をするということはどこか爽やかさの水準をぐいっと上げてくるアイテムなのだろうか。とにかく見ていて気持ちがいい。

友人たちはジャイアン気質のリーダーに、背が低い男、とキャラがしっかり据わっている。愛すべきキャラクターを配した上で、話は大学生たち参加の自転車レースへと展開していく。やはりここでも泣けるのは父親が応援にかけつける姿だ。自分が応援に行ったら負けてしまうという暗示を振り切り、車の中のラジオを聞きながら、「俺の息子だ」と初めて自分の子供の存在を誇りに思うその姿。ボンクラ息子が起こす奇跡を目撃したとき、父親は初めてその家族があることの意味を確認する。

フラフラになりながらも最終コーナーで逆転し、勝利するカッターズ。『がんばれ、ベアーズ』同様にへなちょこ達がそれでも負けない強い精神を持ち、本質的な勝利を獲得するその姿はやはりかつての僕そのもののように感じてしまう。

二日連続で自転車映画に号泣だ。

■立川シネマシティ『ゴーストライター』監督:ロマン・ポランスキー
キネマ旬報外国映画1位作品を立川名画座企画で。フィルム上映。とても面白かった。1位も納得するほどに、現代の政治の暗部と、それを巡る暗号、仕掛け、怪しげな登場人物と様々なフックがある中、身の危険を感じる追いかけっこなど一筋縄ではいかない仕掛けがふんだんになされている。本作は『ドラゴンタトゥーの女』との類似点が多く見られる。主人公がある一定期間の間に仕事を成し遂げなくてはいけない。生活の保証がされ、と同時にその任務を果たすためには同時にいくらかの謎を同時に説いていかなくてはいけない、そしてそれをする作業が本土とは離れたところにある点。そして周辺にキーワードとなる女性が付随する点などなど。それらを見るにサスペンスの鉄則のようなものさえ浮き上がってくる。「ドラゴン〜」が雑誌記者、そして本作が「ゴーストライター」という職業柄もそうだが、謎を解明するために自らの足で取材をしていくが、その深みにハマっていくとどんどん身の危険に合う。そしてそれらのほとんどが見えない敵なのだ。ユアン・マクレガーはその中でゴーストライターとしての存在、すなわち決して激しい自己主張をすることなく、まさに影武者のごとくその存在を映画に定着させつに相応しい演技を見せる。

演出は手堅い。フラッシュバックがあるわけでもなく、特殊な方法を用いないオーソドックスな切り返しショットなどだが、その確実な演出が、極めて適切なロケーションを写し撮り、効果的なものにしているように感じた。特に主人公が車での移動を勧められながらも、頑に拒み自転車で移動するそのシーンは(また自転車だ!)雨が振る中で、過酷な移動手段であえて取材先に訪れようとするその光景だけで、真実に迫りたい感情が伝わってくる。

その後、車に移動する際にカーナビが全く違う目的地を示し、そこに行ってみるとそこが重要人物の家。殺された前任者が乗り、辿り着こうとしていた場所がカーナビによって提示されるという偶然性も、現代のアイテムならではあるが、その音効果や、自転車で移動していたものと違う状況で提示されているため強い説得力を持ちそのシーンはぐいぐい進められる。

やがてCIAの暗躍が見え隠れすることが分かり、ラストシーンではその真実を知る。暗号は既に書かれていた原稿の冒頭部分の言葉を並列すると、ある真実が隠れているというもの。それ自体はよくある謎解きなのかもしれないが、それを伝える演出が最高だった。大統領夫人にそのメモが人の手渡しによって渡っていく。そのメモを見た大統領夫人、そしてその目線の先には、ユアン・マクレガーが。ユアンは持っているワイングラスを高々とあげる。これがカッコいい。そしてそのまま原稿を持ち、外に出る。タクシーをつかまえようとするが、つかまらない。フィックスの映像。ユアンはフレームの外に出る。そして車が激突する音。原稿がパラパラと空を舞う。そして待った原稿が画面に揃い、タイトルロールに!何てカッコいい演出なのだろう!

サスペンスが集約されるたびに、そのゴーストライターとしてのゴーストな存在であったユアンの力強い目が忘れられないのだ。上映時間の2時間を堪能した。

■立川は不思議な街だ。栄え方というか、首都圏の東京人ともちょっと違う。ほんのちょこっと田舎臭さがプラスされて、独特の人種が生まれている。立美とか因縁はある。

荻窪ラーメンを食べる。周りにラーメンを食べている人はいない。昼から飲んでる人だけだ。のほほんとした。

■小笠君と打ち合わせ。次回作に関しては彼に能動的に参加してもらおうと思っている。

■帰宅したら着信とメールがあった。風向きがこちらに吹いている。どうしたものだろう。意外と憂鬱な気がしているのに、こんなことがあるから分からない。自分には何もないけど、空っぽな人間だけど、こういうことで良いのかもしれない。金銭面とか、何だとか、結局そういうものに憧れはあるんだけど、結局自分の裁量で仕事出来ていることの方が遥かに良くて、見たい映画を見れる環境にいれて、それのために行動して、そこでインプットしてアウトプットのことを考えるっていう作業のことね。僕はプロレス者で、表現するものはリングじゃなくて映像だったっていう話。なんなら今後はシナリオ作りでもやってやろうと思っている。8ヶ月のテレビ局時代のトラウマはハッキリ今も残っているけど、それを原動力にしていることを考えたら遥かに良い戦争体験だったと言わざる終えない。あの環境に身を置いたからこその反骨心。