シアターN渋谷『ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春』監督:ブレット・ピアス
予想外な傑作だった。ポストエドガーライト、エドガー・ライトのフォロワーがこういった感じで出てくるとは思わなかった。ぼんくら二人組がゾンビになってしまうが、ゾンビになりきれず半分ゾンビになったまま、好きな人に会いにいくというロードムービーのスタイルをとっている。低予算だし、ルックもお世辞にも決まっているとは言い難いDVDスルー作品系に見られるビデオっぽさはあるんだけど、そういうものを超えた感動が待っていた。まず主人公たちの配列がとても良い。オタクの主人公たちに途中でゾンビ化の進行が進む頭の悪そうなやつをペットのような忠犬的ポジションで可愛気のあるクルーとしてバランスを整えている。彼が死んでしまうときの哀愁や、その仲間たちがこの旅を通じてどれだけ心を通わせているかが、そのラストに向かって収束していくので、増々愛おしくなり、涙腺は崩壊してしまう。

本作が成功しているのはボンクラ特有のグルーブ感に、アクション、スプラッターを全面的に押し出すことなく、あくまでも愛の告白をするためのロードムービーに描いていることだろう。ゾンビになるかけていることで、政府に殺されそうになる対社会の異系の悲しみや、「死霊のはらわた」へのリスペクトから感じられる(それらの影響を隠さないものつくりの愛おしさ)である。それはエドガー・ライト作品にも付随するオタクが新たな物語を二次的に作り出すという方法で、エドガー以外の作家が現れたことで、それらの路線はカルトからポップなものになろうとしている時代背景がとても興味深い。

あと出ている女優が奇跡的に全員タイプ。ぽっちゃりで、顔立ちがえくぼがあるような感じで、心底羨ましかった。これが意外に重要というか、自分が邦画から距離をとりたくなる一つの要因のような気がしてしまう。自分のフェティシズムに正直になったら海の外に目がいってしまったというだけの話。

■9時間半の出来事が起こる。