『哀しき獣』『オジー降臨』

■シネマート新宿『哀しき獣』監督:ナ・ホンジン
凄まじいカット数にまず驚かされる。1カットあたりの秒数が異常に短く、カット割り過ぎと思えるくらいのカット数だけどそれが「正解」なんだと思う。つまりこのスピード感を肯定してしまうのがナ・ホンジンの強み。(たぶんこの方法はインディーズであればあるほどかなり有効だと思う。自分だったらまずパクろうと思う。)

まるでヒッチコック『裏窓』を彷彿とするマンションの上り下り。あまりの寒さにコンビニに行き、カップラーメンを食う、けどそんな合間に。。と極限状態と生活に根付いた行動が両軸に備わっていてもう本当に関心。繰り返される追いかけっこと、それでも真実を知りたいという状況下。しぶとさの中に「生きる」という力強さも見えながらも、次第に明らかになるそのタイトルの意味を感じさせるラスト。国境という「LINE」にひたすら恐怖を感じた。斧や骨で殴り殺すという野人的な殺害もらしくてアクセントになってた。しぶとさ、凶暴さ、サスペンス、視線、国境、見所が多い。

それにしてもシネマートの盛り上がりようは何だろう。メンズデーで大きいスクリーンに7割方客席が埋まっていた。この熱気、口コミと映画の質を求めに来た人たちといるのは何だか楽しい。

シアターN渋谷『オジー降臨』監督: マイク・フレイス, マイク・ピシテリ
この手のドキュメンタリーはある典型例があるということが判明した。だいたいが売れ始める→ヤク、酒等で破滅する→再起する。の極めて分かりやすい構成だ。だからもう『アンヴィル』や『極悪レミー』と変わりはないと言ってしまえばない。そこで厳密な違いが出るのが、被写体が可愛いか可愛くないかだという点。可愛いというのは、茶目っ気があったり、憎めなかったり、微笑ましかったり。オジーが過去の自分のビデオを見て「演出がダサい、見てられない」とその場を立ち去ろうとする様の可愛さといったらない。そんな可愛さが一人の被写体を追ったドキュメンタリーの要でもあるのだろう。カムバック後の免許を取って、楽しそうにドライブをするシーンや、昔住んでた場所を訪れたり、短い取材期間であろう素材もとても強い仕上がりになっていると思った。膨大なアーカイブ資料の映像は健在だった。これらの作品は一番煽りVTRの勉強になるっちゃなるけど、もうドキュメンタリーはしばらく作れそうにないのが、今の自分のテンションだけど。

■DVD『マンハッタン』監督:ウディ・アレン
モノクロの都市、40代独特の諦観とそれでも求めたいロマン。一番男の女々しさが出ていたけども、それすら都市と映画は汲み取ってくれるのだと思う。それにしても全く「昔」という感じがしない。