■編集しながら構成にひたすら悩む。とりあえず編集でシーケンスをいくつか分けてクリアにする作業をしてみた。

新宿バルト9『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』監督:ポール・W・S・アンダーソン
このような娯楽作には一体どのようなテンションで望むべくか、最近は分からなくなっていたのだけども、意外すぎるほどの快作かつ作り手という視点からみても多くの発見があった良作。ポール・W・S・アンダーソンの前作「バイオ4」はただ3Dがやりたかっただけということが前に出過ぎてしまったダメな作品になってしまったのに対して、今作はベーシックな脚本がそもそも良いのだろうが、世界観やキャストの美しさ、美術や勧善懲悪な見やすさが3Dという要素に極めてマッチしていた。まず徹底した分かりやすさと、脇役・主役のそれぞれのこれまた分かりやすいキャラ設定というものが根底にあるだけで3D作品というのはここまで見やすくなるものかとビックリ。空間の奥行き効果、剣技の応酬も含めて立体視することの高揚感が実に巧みに生まれていた。8台のカメラで捉えていたというが、撮影方法はおそらく『七人の侍』にも似た方法論で、このような活劇には実にハマった方法だったことが分かる。パンフのコメントにもあるが、このような最新の技術を使いながらも、極めて撮影スタイルが大掛かりで古典的な映画のスタイルであったことも含めて、3D撮影が初めてその適切なスタイルを見いだした映画ではないか?と思えてくる。

さらに特筆なのが独特のテンポだ。あまりにテンポが良過ぎて、キャラクターの心理状況がやや単純過ぎる気もしてしまうが、かといってそれに突っ込みを激しくいれたくなるほどでもない。むしろ適切なそのテンポと、省略すべきことを適切に省略していることがかえって観客に娯楽として与える快感を与えている。これらのテンポが成立しているのはキャラクターの特徴がものの数分で分かること。三銃士がそれぞれどのような性格で、何が得意なのか?それは既に冒頭のフッテージでの三銃士登場シーンで示されている。さりげない登場シーンにも、それぞれのキャラクターの長所や短所といった説明要素を説明にとどまらずに「アクション」で示してしまう事がこの監督の様々な作品を撮ってきた経験値かもしれない。

加えて役者陣のルックスがその世界観に入らせる。「イケメン」という言葉で片付けられない、それぞれの役者にある味と化学反応が根底にある感じ。

これらの古典作品から学ぶべきことはテンプレート化したベーシックな物語やキャラクターの配置は、どのような創作においても悪い作用に働く事はないということで、紋きりと言えば紋きりであるが、その作品に明確に味付けをして仕上げる事で、それを作品論に高めることに成功することが出来るのだということだ。

褒め過ぎている部分もあるかもしれないのだが、お金を取る娯楽作というのはこうであるべきだし、最新技術と古典劇の掛け合わせの回答として全くもって正しい作品であったと思う。
「大味な作品だ」と一言で片付けてしまうにはあまりに惜しい。大味であるものを真に解読してこそ作れるものがあると痛感させられた。

twitterミラ・ジョボビッチの峰藤子化について言及があった。それで良いのだと思った。

あとファッションや美術だけでも、映画は世界観にアドバンテージを与える。これはそれらの要素に金をかけられない自主作品が見落としがちな肝かもしれぬ。