『PLAYGROUND BASKETBALL, NEW YORK CITY』

またも偶然にもレイトショーで傑作を見る。それが『PLAYGROUND BASKETBALL, NEW YORK CITY』だ。
ストリートバスケのドキュメンタリー。


映像がどれも綺麗で、かつプレイヤーの華麗なパフォーマンスに見とれてしまう。力強い映像のショットや各ストリートの街の様子などが非常に丁寧に収録されており、見応えがあった。気付けば90分の上映時間はあっという間で、ストリートバスケという面白いジャンルがあるんだという最高のプレゼンテーションを与えられた格好となった。

そう、このドキュメンタリーが優れているのは「紹介VTR」として最高峰の域に達した映画になっているからだ。僕も仕事柄プロレスの紹介VTRを作っている身としてはちょっとこの完成度におったまげてしまったのだ。

まず語り口が面白い。どの出演者も語りがHIP HOPの音楽性を醸し出した喋り。そしてナレーションの男の声もラジオDJのような軽快な語り口で進めていく。結果的にそれがストリートバスケを語る上で最も適した語り口になっているというのが驚くべき事なんですよね。まず耳にする情報が従来の道徳的な語りと違うので、一つのエンターテインとして耳に入ってくる。アートドキュメンタリーとしてはかなり見やすいものにしているはずなんですよ。

ぶっちゃけ僕もプロレスの番組を作っていますが、レスラーの喋りに関しては幾分か不満があります。生身の状況を見せるのも一つの手かもしれませんが、何と言うかやっぱり少しはらしい言葉や、演出で喋って欲しいんですよね。ワールドプロレスリングマサ斎藤さんの解説が良かったのは、まさにマサさんの言葉がプロレスラー然としているからだと思います。WWE SMACKDOWNなどのTAZZの解説なんか聞いてても、非常に映像作品としての完成度を高めるものに一役買ってて、そういう部分ではここにいる皆がストリート育ちの喋りをしてますよね。

そしてルックがパフォーマンスに対して良いなと思わせる豊かさを醸し出している点でしょう。24Pの撮影かなにかでしょうが、こういうスポーツドキュメンタリーに映画のコマ数が凄く合ってるんですよね。動きが凄く豊かに見えます。

そして何より、知らないジャンルを「紹介」するという観点で見ても凄くバランスの良い作りになっていると思います。少なくとも90分でストリートバスケに生きる男たちの何たるかや、その動機は理解出来るはずです。「肉体と精神のはけ口」というキーワードも凄く良い。自分も第1回の「さいたまースラム!」で紹介番組の構成にしましたが、ここまで豊かな映像作品には出来ませんでしたね。まあ収録している素材そのものの豊かさが違うっちゃ違うんですが、それを含めてみても僕は十分に打ちのめされた作品だと思いました。