気持ち悪い自分語りを永遠に続けていかなくちゃいけなくなりました。

明日はガンバレ☆プロレス新木場大会です。旗揚げから一年が経過して、4月から第2章をスタートさせたガンプロ。1月に決死の覚悟でユニオンに殴り込みをかけ、俺は4月大会で石川修司の前に壮絶に散り、代表の大家健も5月大会で同じく石川修司と薔薇デスマッチで、薔薇の花びらと共に散っていった。人間は「敗戦」という事実をどう切り返していけるか、その一点をどうターニングポイントに出来るかだと思います。毎回毎回の運営や、興行を成立させることが奇跡のような貧乏団体のガンプロ。それでもまだ見ぬ景色を見たい、そしてプロレスを熱狂の渦に巻き込ませたいという想いをほとばしらせながら、各々が闘うステージを作っています。

そんな僕は明日、力&浪口修と対戦。4月の東京愚連隊興行で対戦した力。百田一家の血統をまざまざと見せつけられ、僕の劣等感は爆発しました。「次もやらせろ」そんな気持ちで向かうことしか出来ませんでしたね。自分の劣等感の前には、ただ吠えることしか出来なかった。情けなさも一周して吠える事しか出来ませんでした。自分の主張が通り、力選手をブッキングすることが出来た。そして試合は冨永とのタッグマッチになった。冨永も僕も感じていることですが、力道山ブランドというそのブランド力を感じています。何もなかった僕らが、力道山の孫と対戦するということだけで、普段注目しない人は注目をしてくれる。その差異が事実として目の当たりにしてきたからです。

力道山ブランドがあることは周知の事実ですが、孫である力選手も「三世」というフィルターがあることで、随分と話題になっているように思えます。彼が何者かどうかは分かりませんが、間違いなく力道山ブランドがマスコミを、そして誰かを語らせている。記事を作っている。話題にしていることは事実でしょう。

俺も冨永も出身は学生プロレスです。学生プロレスのステージとは基本的に日の目の当たらない、大学の駐車場や校舎のはじっこでポツンとリングが置かれて試合をすることがほとんどです。下劣な下ネタのリングネームを付けて、ネタに出来る事は何でもネタにしてきた。自分を曝け出して、フルチンになり、僕らは間違いなく捨て身で不器用に生きてきたと思います。

当然のことながら、誰かが僕らの世界を語ることはありませんでした。僕が在学中に「ガチ☆ボーイ」という学生プロレスが舞台の映画が作られましたが、その世界は随分とデフォルトされたものであり、その幾つかの描写に僕は大きな疑問を覚えました。(マネージャーがサエコという時点でそもそもそんな可愛いマネージャーが入るはずがないというツッコミを挙げてけばキリがないのです)

誰も語られてない、誰かが語らない。そんな学生プロレスを僕は作品にしようと思いました。実際のところ、僕にもそれしか残されていませんでしたから。絵心がないことや、失敗の連続が学生プロレスの世界で何か作品を作ろうという動機に繋がった。消去法で残ったものは僕にとって学生プロレスのコミュニティしかなかった。その小宇宙を語ることしか残されていなかったんですね。

僕が学生プロレスの世界で何かを創作するということは当然「自分語り」なわけです。自分で自分を語る。誰も語ってくれないから、誰もその世界で本当のことを伝えてくれないから、自分で語る。それでも担当の先生は「お前が自分で出演してしまうと、作品としてのバランスが崩れる可能性がある。誰か別の代弁者が必要だ」と言われました。そこで冨永をキャスティングしたのです。冨永をキャスティングしても、冨永の声は自分の声でもありました。それは冨永たちの物語でもありましたが、やっぱり自分の世界でもありました。自分ではない誰かに語ってもらっても、それを創作したいという意思は僕のものであって、やっぱりこれは本質的に自分語りだと思いました。

「自分語り」は本来気持ち悪いものです。偉大な戦国武将の伝記はやはり誰かによって語られることで伝説になってきたでしょうし、インタビューをとる取材者がいて、新聞記者がいてということで、物語が立ち上がるケースがほとんどだと思います。力選手は力道山という血統というフィルターがあることでやっぱり誰かが語ってくれるんですよ。何かそれが悔しいし、現実でもありますよね。

でも再びですね、また岐路になっていますよね、僕らは。誰かに語ってもらいたい、誰かに物語を立ち上げてもらいたいと思っていても結局のところ誰も立ち上げてはくれないんです。それが現実なんですよ。無名であること、力量不足、自分たちのビジョンが伝わっていない情報不足、将来性、色んな要素があると思います。悔しいですよね。でも現実です。

やっぱり一周して俺は「自分語り」を続けるしかないという結論に達しました。誰かが物語を立ち上げてくれるのを待つんじゃなくて、俺がどんどん語っていこうと。もう今成にはそれしか残っていないんです。金がないなら、SNSを使って伝えていく、映像のメディア費が足らないなら、スマフォの動画機能でもなんでも使って伝えて行けばいいじゃない。

「お金」があればきっと解決出来るんです。スタジオだって借りて、高い機材を導入して、ありったけのCGを使えばきっとゴージャスになれると思います。この1年で僕は「お金」の有無による違いを痛いほど感じ、そしてお金があれば見方も変わる事も何となく分かって来ました。けどそれは今の自分には及んでいない。それが現実。ずっとチープな画で情けない気持ちになりながらも、それでも結論は「ストップしたら負け」っていう事実ですよ。

家に帰れば、俺の親父は知らない女を連れていたり、ラブホの受付のバイトに行ったり、もう生活もよく分からなくなって来ました。正直言えば「これからこの人が君のお母さんになるから」なんて言葉を言われたら、俺はそこから始まろうとする物語をストップしようとするでしょうね。いやホントに嫌ですよ。そんなの。ふざけんなってね。今の自分の器量じゃ受け止められない。でももしかしたらそれを受け入れなきゃいけなくなるかもしれないし、少なくとも俺はそういう生活の感情を引き延ばしにしてリングとか映像に持ち込んでます。だってそういうものしか俺は出来ないんですよ。私小説のようなプロレスしか。虚栄心みたいなのがないんです。そりゃあ良く思われたいけど、嘘で塗り固めたそんな偶像でいても苦しくなるだけでしょう。俺はそういう見せ方は出来ないんですよ。だからドキュメントへの志向は極めて必然だったと思います。

ガンバレ☆プロレスは大家健が作った団体です。大家さんは何度もプロレスを辞めた方が良いだろうという状況や岐路に立たれながらも、自分で団体を作るという結論で今に至っています。辞めた方が良いことも想像出来るだろうと思うんですけど、大家さんは気持ちが途切れなかったんですね。たぶん本当にプロレスが好きなんだと思います。

大家さんのマインドがガンプロに反映されているのは僕にとっても良かったんです。俺もそういう気持ちを重ねることが出来ますから。そういう装置であって良いんだと思います。ガンプロは。明日のカードを見れば自己形成に悩んでるやつらばっかりです。内面から浮き上がる感情を旨に闘おうとしている男たち。何もそこまで思い詰める必要あるんかい、と問われればそれまでですけどね、人はもう内面と自分の感情の発露とは無関係で生きていけないと思います。明日ガンプロに上がる人間はプロレスがあって助かっているやつらばっかりですよ。ベッシン、シバター、メガネ、皆が自己改革を促したくてしょうがない。でもそんな発露をプロレスでぶつけられるなら、壮大な自分語りが出来るなら思いっきりぶつかって自分の物語を作れば良いんじゃないかと思います。

俺はこれからたぶんずっと自分たちのことを語っていきます。末端に生きる無様な姿を笑っても良いですし、それに何を重ねるかは見て来てくれた人が思い思いに解釈して良いと思います。でも終われない、人生に、プロレスにギブアップが出来なかった大家健の団体であるガンプロが走り続けることが今の僕らには必要で、そして誰も語られてなくても、自分たちの声が誰かに届いてくれれば、俺らはまだまだ走り続けられると思います。俺たちの生きているこの世界は実に狭い世界ですが、この世界がどこに届くかは続けないと分からないじゃないですか。

力道山という壮大な物語に、学プロ出身者の名もなき自分語り野郎の物語は通用するのか、明日リングで俺は曝け出します。

チケットも受付けてますので、ご連絡下さい。
yumehito.0922@gmail.com




2014年6月1日『ガンバレ☆プロレス〜第二章 2nd Season〜 vol.3』
■MEGANE is back!!
メガネ vs ジ・シューター

■王道 vs アマチュアプロレス
木原文人 vs 尾谷友洋

■ラブホの受付2世 vs 力道山3世again!!
今成夢人&冨永真一郎 vs 浪口修&力

■スペシャシングルマッチ
翔太 vs タイガーベッドシーン

■ノーオフライン・ブロードキャスト・スペシャルストリーミング・ダブルヘルマッチ 異種格闘技戦 
シバター 【MMA・ニコ生代表】
vs  
タノムサク鳥羽【キックボクシング・ツイキャス代表】

■特別試合
大家健 vs 高岩竜一

■日程
2014年6月1日(日)
開場:11:30 開始:12:00

■会場
東京・新木場1stRING

■チケット
全席自由席3,500円(当日券500円UP)