『アナザーハッピーデイ〜ふぞろいな家族たち〜』

サムライTVにてドラファンNo.3納品。疲労困憊。一人で制作するスタイルにぼちぼち限界か。テロップうつのがしんどくて仕方がなかった。

■ヒューマントラストシネマ有楽町『アナザーハッピーデイ〜ふぞろいな家族たち〜』監督: サム・レヴィンソン
27歳の監督が見せたとんでもない作品。こんなとんでもない作品を作る監督が同い年だなんて何て末恐ろしいのだろう。若者特有の達観と諦念とが全て映像化されている。一体どうすれば同じ時間を過ごしてきてこれだけのものが生み出せるのか。24歳の時に書き上げたという今作の脚本は監督の私的な感情から派生れたものなのか分からないが、この作品を作り上げてしまう勇気に感服してしまった。

ときおり、DVカメラで撮影されたスタンダード画質の映像が挿入され、家族のゴダゴダを記録してしまう問題児の視線と、シネスコの映像の交錯というそのスタイルだけとっても面白い。若者特有の冷めた目線というか、親ほど真剣にその問題に向き合えないというか、そもそもそんな状況でカメラを回せてしまうというキャラクターの性格を描写するための布石として、DV映像が有効に活用されているのが今っぽくて良い。

レイチェルの結婚」同様、家族のある人物が結婚することで巻き起こる家族の問題というのは、もう自分のように父と二人だけの極小家族では体感することの出来ない問題だけども、それが何故ここまで共感を覚えるのか。私の幼少期で、従兄弟の家族のゴダゴダというか、田舎に帰省した祭に何となく目にした瞬間がそうさせるのか。

その中でのキャラクターのリアリティとキャスティングのバランスが、従来の作品と全く違うリアリズムを見せている。演劇的ともとれる、顔だけ抜いたカットバックの口論は劇映画としては異例ともいえるドキュメンタリー感が。

さらに口論で問題をぶつけた後の、叙情的の音楽をかけ、その口論の余韻を映像のみで説明させる手腕にビックリだ。クラブの音が、一人の母親からアンビバレンツな感情を表現させ、もう一人の母親から、そのクラブの音による問答無用のイケイケ感を引き出す。

85年生まれって何だろうと考えさせる傑作であった。