■『ブラックパワー・ミックステープ〜アメリカの光と影〜』監督:ヨーラン・ヒューゴ・オルソン
過去のフィルムがテレビ局の倉庫から見つかり、そのブラックパワーにおける検証をその時代に特化して取り上げたドキュメンタリー。オーソドックスな作りで、確かに技術的に目新しいものはないのだが、一つのムーブメントを映像と音を巧みに構成編集することで、再び現代に提示出来るのがドキュメンタリーの魅力であるということが確かに分かる佳作ではないだろうか。

特にラストにドラッグにも手を染め、売春をすることでお金を稼いでいた少女のインタビューは非常に印象的なショットとして提示される。

また過去のフィルムに現在の社会学者らの声を挟む事で、時代考証をフィルムの中に行う作業もありだなと思った。

新宿ピカデリー『ベイビーズ-いのちのちから-』監督:トマ・バルメ
世界各国の赤ちゃんを定点観測に捉えたドキュメンタリー。その国の特性が見える育成とロケーション。そして身体の神秘に微笑ましくなる映像が連鎖する。

劇場内では何故か微笑ましい姿で見つめる沢山のお客さんがいたが、自分はあくまで作者の主張の見えないそのドキュメンタリーの作りに苛立った。狙いすまされたショット、写真集のように展開するその構成だが、どこか楽をしているように思えてしまう、その作風を提示することで面白くすることをになっているのか、疑問が生じてしまった。たぶんこれDVDで見ると相当退屈だし、寝てしまう。こういう奇麗な作品を作る作り手は美術大学出身で沢山いるのだけど、今最も見たいドキュメンタリーはダイナミックな作りを恐れない創作者だと思う。もっともっと原一男のような世界に迫って欲しいと願う。

新宿バルト9キラー・エリート』監督:ゲイリー・マッケンドリー
ジェイソン・ステイサムのその無軌道なのか、正確なのか分からない仕事っぷりが最高なのだが、それに加えてデニーロがその脇を固めるポジションにいるのが画になる。クライブコーエンは最後まで敵なのか味方なのか分からないまま物語が進行するが、互いに人質になり助け合うシーンはそれまでのプロットを活かした爽快感溢れるシーンだった。ステイサムが椅子に括り付けられながら、ローリングセントーンしてたのも凄かった。

この手の佳作は作品満足度がなんだかんだで高い。CIAものというか、それらの共通点を探し目指す事が良いVTRを量産出来る鍵の一つではないかと思うのだが、どうだろうか。